本研究では公立高校の再編整備に関するデータベースを作成している。それに先立ち、都道府県別の全日制公立高校数の推移を把握するためのデータベースも作成した。この推移に関しては、国立教育政策研究所の高校教育改革の包括的な研究ですでに示されている(代表杉野剛2014『高等学校政策全般の検証に基づく高等学校に関する総合的研究』、6頁掲載図 2_4_all.pdf (nier.go.jp))。しかし、各都道府県の動向がひとつの図で示されており、推移のパターンをやや把握しづらいものとなっている。
そこで公立高校数の増減のパターンをいくつか抽出してみたい。文部科学省『学校基本調査』より都道府県別全日制公立高校数、中等教育学校数(S50-R1)を再集計したデータベースを作成したのち、各都道府県の学校数の変遷について1975年(S50)時点の学校数を1とし、各年の学校数の比率を算出した。学校数の増減パターンをシンプルに把握するために、その数値をクラスター分析にかけた。まず、各都道府県の比率の推移を図1に示した。なお、都道府県名は煩雑になるため掲載をしていない。
つぎに、この増減比率の推移データをクラスター分析にかけた。クラスターは4つ算出されるように設定をし、ウォード法にて距離を測定した。4つのクラスターにはそれぞれ、次の都道府県がグルーピングされた。
第1クラスター:埼玉、香川、青森、秋田、群馬、京都、北海道、神奈川、東京、沖縄
第2クラスター:石川、徳島、岩手、山口、鹿児島、広島、高知、宮崎、島根、岡山、大分、鳥取
第3クラスター:静岡、兵庫、滋賀、福岡、山梨、長崎、宮城、山形、岐阜、長野、愛媛、三重、和歌山、福島、福井、熊本、茨城、愛知、栃木、富山、佐賀
第4クラスター:新潟、大阪、千葉、奈良
クラスターごとの増減率推移を以下に示す。
各クラスターの各年平均値を取り、グラフ化したのか下の図である。この推移から、4つの増減パターンの大まかな姿を把握することができる。いずれのクラスターも、1980年代後半に学校数を増加させている。
第2クラスターはもっとも増加率が低く第3、第4、第1の順で増加率が高い。その後、第2クラスターはほとんど動きを見せず、2000年代後半に学校数が減少し、1975年時点よりも学校数を減らしている。
第3クラスターも数値の動きは第2クラスターと似通っているが、1980年代後半の増加率が第2クラスターおり大きかったために2000年代後半に学校数を減少させたものの1975年時点の水準よりは高い値でとどまっている。
第4クラスターは2000年代前半に微増し、1980年代後半にやや増加したものの、その後、2000年代後半に大きく減少している。ただし奈良県の特異な動きに引きずられており、第4クラスターの他県の動きだけ見れば、減少率は第2、第3クラスターと同じくらいである。
第1クラスターは1980年代後半に2倍近くに学校数を増やしたのちも2000年代にかけて微増を続けている。2000年代後半に減少に転じる傾向は他クラスターと同様であるが、やや減少率が小さいのは、東京、沖縄、京都が学校数を一定に保っている影響が大きい。なお、東京は2000年代後半に学校数を増加させている唯一の自治体である。
以上、 4つの増減パターンを抽出した。それぞれのパターンは1980年代後半に増加し、2000年代後半から減少に転じるという共通した性格を持つが、その増減幅の違いで4つのパターンに分かれることがわかった。また、現在の高校再編整備は特に第2クラスターでより大きな課題になっていることが減少率の大きさからわかる(第4クラスターは奈良県の「外れ値」があるため第2クラスターと純粋に比較できない)。
・この研究はJSPS科研費20K13923の助成を受けたものです。
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