本研究は人口減少により公立高校縮小期の只中にある地方県教育委員会が、高校再編整備に伴って当該地域の高校生の卒業後の進路及びそれに伴う地域移動を水路付けるいわゆる「進路トラック」をどのように再編していくのかを明らかにすることが目的である。「進路トラック」は大きく「都市大学トラック」と「地元定着トラック」に分かれるものと仮定した上で、各地方県教育委員会が自県の公立高校をどのトラックに配置し再編しようとしているのかを解明する。この目的に照らし、本研究の定義上の「地方県」にあたる36県を分析対象とし、以下3つの課題に取り組む計画を立てた。
1つ目の課題が大学進学をめぐる高校生の進路選択や地域移動、それに関連する教育政策史等の先行研究の整理である。2つ目は戦後から高校拡大期(1980年代ころ)までの各地方県教育委員会による進路トラックの整備に関する分析である。そして3つ目に公立高校数が本格的に縮小していく1990年代以降の各地方県教育委員会による進路トラックの整備に関する分析である。
2020年度は主に1つ目と3つ目の課題に取り組んだ。3つ目に関しては、分析対象地方県の1990年ごろに存在していた全公立高校を対象に、1985-1987年度時点と2019年度時点の2時点について、各ケースの学科・生徒数・男女別県内/県外就職者数、所在地からなるベースを作成した。また各地方県の高校再編整備計画に関する行政資料の収集も行った。また、全国レベルの再編整備に関するデータベース作成後は進路トラックの再編の在り方を類型化し、そこからいくつかの県について事例研究を行う予定にもしているが、本研究課題の妥当性を早期に確認しておくために、2020年度は地方県に属するA県を事例とした分析を先行して実施した。それ際し、データを分析するための理論枠組みを検討する必要が生じたため、所属機関である大月市立大月短期大学の紀要にそれに関する論文を投稿・公表した。それ以外に公表済みの研究成果はないが順調に研究計画を遂行できた。
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